近年、従来の給与制度である月給制から、新たな給与制度である年俸制へと移行している企業が増えてきています。とはいえ日本企業の中ではあまり一般的ではありません。ここではそんな年俸制について様々な角度から解説していきたいと思います。
年俸制とは?
日本での給与体系は一般的に、月々に支払われるお金の額が決定する月給制を取る事が多いです。読者の方々も多くは月給制で給料のやり取りをしていると思われます。
ですが近年、新しい給与体系が採用されることが多くなってきています。それが年俸制です。年俸制は年(度?)の初めにこの一年間であなたに支払う給与は合計いくらですよ。という額が決定されそれを分割して払っていくというものです。野球選手の給与などはこれに該当します。
恐らくこの記事を読まれている方の多くは、年俸制という、聞いた事はあるけれど実態がよくわからないものについて、ちょっと調べてみたいとか、知る必要がある!という方々だと思います。
この記事ではそんな方々の為に、「年俸制とはいったい何なのか」という事を大枠で簡単にではありますが解説していきたいと思います。
年俸制と月給制
まずなによりも皆さんが気になっているのは、「年俸制と月給制は何が違うのか?」という事だと思います。年俸制と月給制で違うところはいくつもあるのですが、まずは最も重要な「給与」について、違いを解説していきたいと思います。
月給制
月給制とは皆さんもご存じの通り、月々毎に、もらえる給与額が決定する制度の事です。といっても、正確には月毎に決定しているわけではありません。1月の中のもっと細かい期間、1日や1時間などの総計として1月の給料が決定しています。
もう少し詳しく説明しますと、月々の給料は「働いた日数×日給額」もしくは「働いた時数×時給額」を、1月分計算、総計した値になります。なので給料が決まる最小単位は日であったり、時間であったりするわけです。
こういった給与体系の方々は正確には月給制ではなく、日給制や時給制として扱われます。ただ給与が入るタイミングが月毎なので自分は月給制だと思っている方が多いようです。
といっても、月毎に給与が決定されるのは確かなので、月給制という扱いでも特に問題は起きません。
年俸制
さて問題なのは、「給与は月毎に決定される(支給される)ものである」と考えている我々の感覚を大幅に超えて年単位で決定される、年俸制です。
年俸制に関しては一般的な給与体系の感覚と違う気がするので、何だかよくわからないものと思われがちですが、実はそんなに違いはありません。違うのはいつ給与が決定するのかというところと、それをどうやって支給するのかというところだけです。
まず給与の決定方法ですが、これは年初めに決定し、その額はその1年間の支給額として扱われます。なので給与として入ってくる年間の額は年初めにわかります。昇給なども年初めに決定することが多いようです。(ここは企業によって色々と変わります)
そして決定した給与額がどう支払われるかですが、基本的には月毎に支払われます。多くの企業は年初めに決定した年俸額を12分割して給与として月々に支払います。中には14分割にして残りの2分をボーナス(賞与)として支払う企業もあるそうです。この辺りは後程解説します。
年初めに1年の給与額を決定し、それを分割して月毎に払う。年俸制が月給制と違うのはこれだけです。
ちなみに年俸制ときいて、年初めに全額ドカっと支払われると思われている方もいらっしゃいますが、実はそれは労働基準法で禁止されています。第24条、賃金の支払において「賃金は毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定められています。
賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
ボーナス(賞与)はどうなる?
「年間の支給総額が決まっているんだったら、年俸制ってボーナス(賞与)が無いんじゃないの?」という疑問が浮かんでいる方もいらっしゃるでしょう。実際、その疑問は非常によい目の付け所といいますか、しっかりと確認しておかなければいけない部分です。
ボーナス(賞与)の処理については、一概には言えませんがおおよそ3つのパターンがあります。これについて解説していきたいと思います。
3種類のボーナス処理
まず先に3種類のボーナス処理の種類をお伝えします。
①ボーナス無し
②ボーナス有り、ただし総支給額は変わらない
③ボーナス有り、かつ総支給額とは別枠
①ボーナス無しについて、これは単純にボーナスがありません。年初めに決定した年俸=年間総支給額としてそれ以上にお金が支給される事が無いパターンですね。
②ボーナスは有ります、が、総支給額は変わりません。これはどういうことかというと、年俸が決定した時にそれを分割して給与として支払うわけですが、ここで12分割せずに14分割や16分割するというやり方です。
例えば年俸が560万円で、14分割したとしましょう。560÷14=40という事で、月々の給与は40万円支払います。そして残った40万円×2を6か月に一回、ボーナス(賞与)として支払う。という形です。
つまり年俸の中にボーナスが含まれているパターンです。このパターンで年俸を何分割し、どのタイミングでどの割合をボーナスとして支払うかは企業によります。
③ボーナスあり、かつ総支給額とは別枠というパターンです。これは単純に年俸とは別枠でボーナスがありますよ~という形態の事です。額は業務評価などによって決定する事が多いようですが、実際のところは企業毎にその基準はバラバラです。
年俸と一口に言ってもどこまでがそこに含まれるのかは会社の規定によります。
年俸制に含んでいて例えば14等分して12を各月、残りの2を各1ずつ6月と12月に支払うという会社もあります。
決められた年俸のほかに業績評価によって賞与を出すという会社もあります。
出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1012091165
要綱をしっかり確認!
さて、ボーナスについて重要なのは自分が気になっている企業がどの形態を取っているのか、という事でしょう。特に一般的なボーナスのイメージは従来の給与とは別枠でもらえる、+αのような感覚の方が多いと思われます。
ですが年俸制でのボーナスに関しては、無い事もあれば、有るといっても総支給額は変わらない。みたいな事もあり、想定していたのと違う!という事になりかねません。
ですので年俸制で気になる企業がある方は是非ともその点は確認しておくべきでしょう。
残業代(時間外手当)が出ないってホント?
「年俸制は1年間の給料が決まっているんでしょう?じゃあ残業代は出ないってことですか?」
年俸制と聞くとこのような疑問を持たれる方が多くいらっしゃるようです。年俸制では本当に残業代が出ないのでしょうか?ここでは年俸制と残業代の関係について詳しく見ていきます。
出ないと犯罪
まず先に結論からいきましょう。
出ないという事はありません。残業代が出ないと犯罪です。
これは明確に労働基準法で決まっています。そもそも年俸制とは給与の決め方を定義しているだけです。一定額を払えば一年間いくらでも働かせられるというものではないのです。
労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働かせた場合、年俸とは別に時間外割増賃金(いわゆる残業代)を支給しなくてはならない、と定められています。つまり普通の給与体系と同じというわけです。
残念ながらこの点に関しては労働者も、そして経営者の方も良く理解していない節があり、時折問題に発展しています。労働者の方も経営者の方も、年俸制という言葉は残業代を払わなくてもいい免罪符ではないと理解しておく必要があります。
https://www.teamspirit.co.jp/workforcesuccess/law/annual-salary-system.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html
みなし残業
年俸制でも残業代は払わなくてはならないと述べましたが、実はいくらか例外があります。そのうちの一つがみなし残業です。
一口に法定労働時間が決まっているといっても、全ての職業が必ずその時間以内に業務を遂行出来るとは限りません。どう考えてもその時間を超えて働かねばならないだろうと予測される時、みなし残業という制度が存在します。
この場合、恐らくこれぐらいの時間は残業が必要だろうから(例:2時間/day)事前にその分も給与として支払っておこう、というのがみなし残業です。この場合、定時に帰った日も、1時間残業した日も、2時間残業した日も、同額の(2時間分の)残業代が給与として支払われます。(2時間を超えた分は普通に残業代として計算されます)
そしてこの給与はどのような形で支払われるかというと、最初から年俸に含まれています。つまり従来の法定労働時間内の分の給与と、みなし残業(2時間/dayなど)分の残業代が最初から年俸に入っているという状態です。
この場合、みなし残業時間以内の残業なら、残業代という形で支給される事はありません。この際当然といえば当然ですが、みなし残業代及び、従来の法定労働時間に対する給与がある程度適切であるという前提にたちます。
年俸制で残業代が出ないのは一部だけ|見分け方と請求方法|厳選 労働問題弁護士ナビ
会社員なら知っておきたい、みなし残業トラブルと対処法 | 20代の”はたらき”データベース『キャリアコンパス』- powered by DODA –
管理職は出ない?
また残業代が出ない一例として、管理監督者は残業代が出ません。労働基準法では、管理監督者には残業代を支払わなくていいと定められています。厚生労働省によると、管理監督者は労働者ではなく、経営者と一体的な立場として業務に関わるので、労働基準法の制限を受けないのだそうです。
よって年俸制においても、管理監督者(いわゆる管理職)は残業代が発生しません。しかしそれが大きな問題にもなっています。いわゆる「名ばかり管理職」問題です。
前述した通り、管理監督者には残業代が出ません。それを逆手にとって一部の悪質な会社では、労働者を
管理職に仕立て上げ、残業代というコストを削減しようとしています。
これは会社側が、残業代を支払わなくてもよい管理職を誰に任命するかという権限を自分たちが持っているという勘違いしていることから生じています。確かに管理職の任命は会社に権利がありますが、労働基準法でいう「管理監督者」として扱うには厳密な要件があります。
・企業の部門等を統括する立場にあること
・企業経営への関与が認められること
・自分の業務量や業務時間を裁量的にコントロールできること
・賃金面で十分に優遇されていること
これらが守られていないと会社が勝手に「管理職」として任命しても労働基準法でいう「管理監督者」にはなり得ません。管理職だから残業代が出ないというのは、ある意味では正解ですがある意味では間違いです。管理職になったものの残業代が出なくて苦しい・・・と思っている場合は、労働基準法でいうところの「管理監督者」の要件に満たない可能性があります。
管理職に残業代が出ない理由と未払い残業代を取り戻す方法|厳選 労働問題弁護士ナビ
どう計算するのか
残業代の計算はやや複雑です。というのも、会社側と労働者側がどういった条件で契約したかによってその内容が変わってくるからです。また労働の実態がどうであったかでも変わってきます。最も簡単な計算式としては
(時間外労働の時給)×(時間外労働時間)=残業代
という形になります。
時間外労働に自給は、まず1時間あたりの基礎賃金から計算します。これは単純に年俸の中から算定基礎(基礎給与の部分)を計算し、その値を1年間の所定労働時間数で割るだけです。
さてこの基礎賃金に対して、実際の残業がどのような実態であったかによって、賃金の割り増しが発生します。1日の労働時間が法定時間内(8時間以内)であればそのままの額となりますが、8時間を超えた部分及び、深夜残業に対しては賃金が割り増しされます。
8時間を超えている場合の賃金は×1.25倍です。深夜残業は22時から5時の間の仕事がこれにあたり、こちらも×1.25倍となります。8時間を超えていて、さらに深夜労働だった場合、1.5倍が最低割増賃金になります。また休日出勤に対しても割り増しがあります。こちらは×1.35倍です。
以上の計算が出来れば、後は実際どれだけ残業したか、その時間を掛けるだけです。残業時間の定義も単に(1日の業務時間-8時間)というわけではなくみなし残業などの契約次第で変化します。詳しいサイトにリンクを貼ってあるのでそちらを参考に一度計算してみてもよいかもしれません。
年俸制でも残業代をもらえる?年俸制の残業代の計算方法と請求方法
税金面で違いがある?
年俸制についての疑問としてよくあがるのが、税金についてです。どうも年俸制にすることで税金の総額が上がる、もしくは下がるという噂があるようですね。ここでは年俸制の場合の税金が変化するのかどうかまとめていきます。
総額は変わらない
税金と一言にいってしまっても、その内訳は様々です。所得税、住民税、社会保険料etc…ですが、基本的に給料と関与があるのは所得税か社会保険料でしょう。ここでは所得税についてお話しします。
所得税に関して、結論を先に言えば特に税額が変わることはありません。所得税はある人が一年間で稼いだお金の総額に対してかかります。なので年俸制だろうが月給制だろうが、稼いだ総額が変わらないのであれば税金の額も変わりません。
どちらかというと問題は社会保険料の方に生じます。
社会保険料の計算がズレる
社会保険料に関しては年俸制では変動が生じる可能性があります。実はこれは年俸制か月給制かの違いではなく、年間の支給総額がボーナス込みの形か、完全月割の形かの違いによります。
ボーナスのところで言及しましたが、年俸制では年俸額を14分割や16分割して1月に1分割分の給与を、半年に一回、余った1or2分割分をボーナスとして支給する企業があります。逆に分割は12分割で1月1分割、ボーナス無しという企業も存在します。(これを完全月割といいます)
さて問題が発生するのは、この社会保険料が月々の給与とボーナスとで別々にかかるというところです。社会保険料は基本、(金額)×(保険料率)で計算されます。正確には支給額に応じて「等級」が定められ等級毎の標準報酬額に保険料率が掛けられます。ここで「等級」には上限があり、そのため一定額以上の支給額には実質社会保険料が課されないという形になります。
「等級」は月額62万を、ボーナスにかかる保険料率は一回の支給につき150万円を最大値とし、それ以上の額では標準報酬額は変動しません。そのため一定額以上を稼ぐ人からすると年俸制の完全月割の方が納める額が小さくて済む可能性があります。
例えば年俸960万円稼ぐ人がいるとしましょう。完全月割ではこの人の給与はひと月960÷12=80万円です。これは等級が最も高い時の62万を超える金額なのでその分は保険料がかからないということになります。
一方で16分割の場合、月々60万、ボーナスは120万です。この場合だと給与もボーナスも最大額を超えていないのでいずれにしてもきっちり社会保険料を支払っています。完全月割に比べると支払い額もやはり大きくなります。
退職金はどうなるの?
年俸制といえば退職金も気になる要素の一つですよね。年功序列制が多い月給制と違って、年俸制では前年の出来次第でいきなり給与が上がったり下がったりすることもあります。そんなある意味で一貫性のない給与体系では退職金はどういった形になるのでしょうか。
企業次第
まず退職金が存在するのかどうか。これははっきり言って企業次第です。ただし、年俸制を採用している企業では退職金という概念がそもそも無いパターンが多いようです。
まず第一に、退職金とは何かということを考える必要があります。様々な解釈がありますが、基本的にはより長く働いた者がより多くもらえる、いわゆる年功的な制度です。日本において退職金という概念が発達したのも、年功序列、終身雇用が可能だったからとも言われています。つまり「より長く、忠実に働いてくれる人こそ望ましい」という思考がその裏にあります。
退職金はそんな思考を実現するための制度といえます。つまり「長く忠実に働けば、それだけ多くのお金を仕事を辞める時に与えますよ」というインセンティブを持たせることで、長期的に会社にいるように働きかけるものです。
一方で年俸制はより長く働く事よりも、今この瞬間に実力があることに価値を置く事が多いです。なので実力のある人には高い賃金を払いますし、無い人には安い賃金しかまわりません。(日本ではずっと年功序列、終身雇用という考えが定着しているので、それに引っ張られて多少、年功的な支払も含まれることもあります)
長く働くことに価値を置く終身雇用及び退職金制度と、今この瞬間に実力があることが重要視される年俸制、二つの制度はあまり相性が良くないといえるでしょう。一般的に年俸制を採用している企業は終身雇用を前提としておらず、そのため退職金という概念、制度は持たないという選択をしていることが多いといえます。
年俸制を導入したときの退職金について | キャリアのことならキャリアパーク
退職金がなくなる?成果主義で変わる退職金制度|【Tech総研】
『年俸制』って実際どうなんですか – 求人を見ていて、「年俸制」とあ… – Yahoo!知恵袋
退職金制度の有無は要確認
近年では転職という行為に対してネガティブなイメージも少なくなり、一時的にある会社に身を置くという考え方も広まってきています。つまり一社に骨を埋めなくてもいい、終身雇用じゃなくても良いという考えが受け入れられるようになってきているようです。
とはいえ、まだまだ世間的には退職金制度を完全に撤廃するという動きは簡単には受け入れてくれないようで、反発を恐れてか、年俸制でありながら退職金制度も一応採用している企業も多くあります。気になっている企業が退職金制度を採用しているかどうかは、ご自身でよくお調べになることを強くお勧めします。
半期年俸制とは?
年俸制に調べていくと、恐らく半期年俸制という言葉に引っかかるでしょう。ここでは年俸制と半期年俸制とでは何がどう違うのか書いていきます。
どのタイミングで給料を決めるか
年俸制は1年間の給料を最初に決めてしまう制度です。想像に難くないと思いますが、次の昇給が1年後なので金銭的な面でのモチベーションを維持するのが難しくなります。
そこで出てくるのが「半期年俸制」という制度。これは1年間を2分割して、半年に一度給与決定のタイミングを設けるというものです。完全な年俸制よりは給与改定のタイミングが近いので社員としてはモチベーションを維持しやすくなるというメリットがあります。
確認は就業規則で!
会社には基本、就業規則というものがあります。会社や従業員が守るべきルールであり、仕事内容、賃金、休日の設定など、会社と従業員があらかじめ約束を取り付けるものです。会社と従業員の間でのトラブルを避けるためのものであり、当然、給与制度についても書かれています。
ここでは就業規則と年俸制についての関係について説明していきます。
就業規則では明文化が義務
まず何よりも先に伝えたいのは、その会社がどんな給与体系を取っているかという点は必ず就業規則に明文化しないといけないということです。当然、その会社が年俸制を採用しているのかそれとも月給制を採用しているのか、という事も明文化されています。
このことに例外はありません。元々その会社が月給制を採用しており、一人二人だけ年俸制で採用するという選択をしたとしても、就業規則には年俸制を採用し得る旨を記載しなくてはならなくなります。会社全体を年俸制に変えるとしてもやはり就業規則への明文化は義務です。
また就業規則に記載さえすれば会社側が勝手に変えてもよいというものではなく、基本的に従業員個人個人との同意を得たうえでの変更が望ましいとされています。
いずれにせよ、就業規則は賃金などについての約束事をしっかりと明文化することが義務付けられたものです。就業規則をしっかり読み込む事で会社の給与体系についてしっかりと理解することが出来るはずです。
メリット・デメリットは?
ここまで様々な側面から年俸制についてみてきました。そろそろこの記事も終わりに近いです。ここで大雑把にではありますが、年俸制について、どんなメリット・デメリットがあるのか、ざっくりとみていきましょう。
メリット
年俸制についてまず間違いないことは、年俸制は実力主義的な給与制度だということです。この事実について、メリットともデメリットとも取れます。
メリットとして取るのであれば、現行の年功序列、終身雇用を前提とした給与体系に比べて、若いうちから実力さえあればそれに見合った賃金を得る事が出来ます。そういう意味では実力者にとっては非常にメリットの多い給与制度だといえるでしょう。これは逆に会社側からすると若い才能を見出しやすくなるとも言えます。
またこれは一概に言える事ではありませんが、日本の従来の給与制度は終身雇用を前提に成り立っているのに、既に終身雇用は崩壊しているという意見もあります。その意見によれば、いずれ終身雇用は完全に崩壊し、誰もかれもが「どれだけ長く働いたか」ではなく「どれだけ実力があるか」で評価されるだろうとされています。
そのため、今のうちから実力主義の会社に身を置くべきであり、その点で年俸制は非常に実力主義と相性がよく、新しい給与体系としてメリットがあるのではないかともされています。
デメリット
一方、デメリットとしては年俸制が実力者向けである以上、逆にそこまで実力の無い人間が年俸制の企業に行くと低い評価しか得られません。その点では言い方は悪いですがあまり能力が高くない人や、大器晩成型の人にとっては厳しい環境かもしれません。
また実力を持つ人にとっても厳しい要素があります。それは年俸制が長期的な視点での雇用ではない点にあります。今や近い未来では高い能力を誇っていていも、時代の流れや社会の需要によっては急に評価が落ちる可能性があり、その際には厳しい立場に立たされるでしょう。
最後に…契約書をよく読もう
年俸制か月給制かなどの賃金に関する約束事だけに限らず、どんな仕事内容か、休日の設定はどうかなど、仕事に関する重要な事項は雇用契約書に全て纏められているはずです。
雇用契約書は非常に長く読むのが大変ですが、必ず精読されることをおすすめします。ここでの契約内容がその後の仕事に関する全てを決定するといっても過言ではありません。
これまで見てきたような年俸制に関する知識をどれだけ持っていたとしても、契約書にサインする際に使えなければ、全く役に立ちません。多くの方にとって得た知識を最も活用出来るのは雇用契約書を読み込み、その内容を理解するタイミングでしょう。
ここで得た知識を存分に活かすためにも、納得いく雇用契約を結ぶためにも、是非雇用契約書に関しては全力で読み込むようにしていただければと思います。
まとめ
如何でしたでしょうか。やや長い内容となってしまいましたが年俸制について様々な観点から説明させていただきました。最後にこの記事の纏めで締めたいと思います。
年俸制とは
まず年俸制とは何かというお話しから始まりました。従来の給与制度として広く採用されている月給制と違い、1年間の給与を一回で決めてしまうこと、決定した年間の支給額を分割して月ごとに払う事であるという話でした。
ボーナスは?
続いてボーナスについてお話ししました。年俸制においてのボーナスは存在しないと思われがちですが、3パターン存在するというお話しでした。本当にボーナスが無いパターン、年間の支給額の分割数を増やしてボーナスとして扱っているパターン、年俸とは全く別枠としてボーナスが支給されるパターンの3種類でした。
残業代はどうなる?
続いて年俸制というと特に話題になりがちな残業代についてお話ししました。年俸制では残業代が無いという話が出回っていますが、本当に残業代を出さないと会社側の犯罪になります。
年俸制は一定額を払えば1年間従業員を好き放題出来るという制度ではありません。この点は企業側も従業員側もしっかりと勉強しておく必要があります。
税金面での変化
また税金についてもお話しさせていただきました。月給制と年俸制で税金額が変わるかというお話しでしたが、所得税については変わらず社会保険料についてはズレが発生する可能性があるというお話でした。
退職金について
退職金についてもお話しさせていただきました。元々退職金制度と年俸制とは相性が悪いのですが、一応年俸制と退職金制度を同時に採用している企業も多い様です。気になる方は確認する必要があるでしょう。
半期年俸制・就業規則
また半期年俸制や就業規則についてもお話ししました。半期年俸制は年俸を決めるタイミングについてのお話、就業規則はあらゆる約束事が就業規則に記載されていなくてはならないというお話しでした。
メリットデメリット・契約書
また最後に年俸制についてのメリット・デメリットを簡単にではありますがまとめました。そして何よりも重要な契約書について。ここでしっかりとした契約が結べなければ意味がありません。知識を使うためにも、よりよい労働環境のためにも、契約書はしっかりと読み込みましょう。
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