「扶養内で働く」を可能にする方法

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パートをしている主婦は「103万&130万の壁」を考えて働く方が多いですよね。安倍内閣では「少子化対策を!」と言いながらも「配偶者控除撤廃」に向けて様々な討論がされています。実際、2016年には106万円の壁が登場。扶養内で働く人にとっては働き方を考える、いいチャンスかもしれません。

「主婦」が働きにくい現実

少子化対策なの?共働き推進なの?

高齢化社会によって、介護が必要な人が増えていると言われています。夫や妻の親が要介護になったとき、妻が面倒を見るというのが大多数。だから、妻は仕事を制限する・もしくは辞めるという選択をすることが多くなっています。

さらに保育所が空かないという問題も。産後早く働きにでたくても、子どもを置いて仕事復帰するわけにはいきません。なのに保育所に入れなくて、育児休業いっぱいとると会社から小言を言われるという方も。

仕事を続けたくても続けられない!!

転勤族の旦那さんの妻だと仕事をずっと続けるのは難しいし、不妊治療をしている人は病院に通うことが増えると正社員として働きにくい。

【仕事を続けたくても続けられない!!】そう思っている主婦って、結構多いのではないでしょうか。なのに、税金はどんどんあがるし、配偶者控除も廃止になるかもしれないという世の中。

「少子化対策が必要」と叫ばれているのに、「もっと女性は社会で働こう!」とも言われていて、どうすればいいのか働き方を悩んでいる人いませんか?

今回はそんな悩める主婦の方がどうやって働けばいいのかの【物差し】となる、収入の壁とお給料との関係を見ていきたいと思います!

「扶養内」の5つの壁って?

一言で「扶養」といっても、税法上の扶養・社会保険の扶養の2つに分けることができます。そしてその2つに対して、<5つの壁>があるんです。まずはその2つについて解説しましょう。

また、ここでは「夫」が「妻」よりもお給料をもらっており、「夫」が一家の大黒柱である家庭を前提に説明をしていきますね。

税法上の扶養

所得がある人は、毎年所得の合計から所得税や住民税を計算します。その所得税・住民税の計算のときに、いくつかの「控除」が考慮されることになっています。所得から控除額をひいた金額に所得税率や住民税率をかけて、税金の納税額が決まるんですね。

そしてその控除のうち、配偶者に関わるものが2つあります。配偶者控除と配偶者特別控除です。配偶者の収入額によってこの控除がされるかどうかが決まることになるんです。

この控除に当てはまっているかどうかというのが「税法上の扶養になっているかどうか」というポイントと言えます。

社会保険の扶養

ここでいう社会保険とは、<健康保険と厚生年金>のことを指します。夫が会社の健康保険・厚生年金に加入している場合、夫は「国民年金の第2号被保険者」となります。

仕事をしている妻は、ある一定の収入以下であれば、その夫の扶養となり「国民年金の第3号被保険者」になることができます。第3号被保険者になると、国民年金保険料・健康保険料を支払わなくてOKになるため、ここを目指す妻が多いんですね。

しかし収入がある一定額を超えてしまうと、夫の扶養でいられなくなるため、自分が「国民年金の第1号または第2号被保険者」となり年金保険料・健康保険料を支払わないといけなくなるんですね。

また夫が自営業などで国民健康保険に加入しており、厚生年金保険料も納めていない場合には「国民年金の第1号被保険者」となります。夫は、国民健康保険料と国民年金保険料を自治体に納めることになります。

その場合、国民健康保険には「扶養」という概念がないので、妻は夫と同じように国民健康保険料と国民年金保険料を自治体に納める「国民年金の第1号被保険者である」ということになるでしょう。

つまり妻の<社会保険の扶養>とは、夫の健康保険の扶養となっており「自分で健康保険料を支払っていない」という状態を指します。配偶者の場合、健康保険と年金はセットで考えることができるので、「国民年金の第○号被保険者かどうか」で考えるとわかりやすいでしょう!

<所得>の計算方法は?

年収と所得。計算をするときややこしいものですが、それぞれ違いがありますので確認しておきましょうね!

まずは年収。会社員の場合の年収とは、会社からもらうお金のこと。税金や社会保険料などを引く前の金額ですね。自営業者の場合の年収は、「1年間の売り上げ」としている人が多いようです。

対して「所得」とは、年収から経費をひいた分になります。自営業者の場合、売り上げから会社を運営するための経費をひいた分が所得となるでしょう。

お給料をもらっている会社員の場合、「給与所得控除」というものがあります。「お給料を稼ぐためには経費がかかるだろう」ということから引かれるものなので、年収から給与所得控除をひいた分が所得ということになるでしょう。

ちなみに「給与所得控除」は、年収が1,800,000円以下だと収入金額×40%と計算できますがその金額が650,000円以下の場合には650,000円と決められています。つまり、最低でも65万円の給与所得控除額があると言えますね。この金額が、それぞれの壁を考えるときに大切になってきます。

No.1410 給与所得控除|税について調べる|国税庁

「壁」と納める金額の関係

扶養についてだいたい理解できましたか?では次は、この「扶養」に関係のある壁について説明をしていきましょう。

それぞれの壁について、妻の年収が関わってきます。ここでは【妻の所得はお給料のみ】ということを前提にお話していきますね!

100万円の壁

「100万円の壁」は【妻が住民税を払うかどうか】というポイントです。この壁は他の壁に比べると「乗り越えやすい壁」と言えるかもしれません。また、住んでいる自治体によっては多少動く壁になることもあるので注意しましょう!

住民税は自治体によって金額が変わってきますので今回は東京都を例に見ていきましょう。東京都の住民税は、【前年中の合計所得金額が35万円以下で非課税となる】と決められています。つまり、前の年の所得の合計が35万円以下であれば住民税は支払わなくて良いということなんですね。

所得が35万円以下ということは、給与所得控除の最低金額は65万円でしたので、35万円+65万円=100万円以下のお給料の人は住民税は支払わなくてOKということが言えますね。

東京都主税局<都税Q&A><区市町村税:個人住民税>

先ほど100万円の壁は「乗り越えやすい壁」と言いましたがどういうことなんでしょうか。例えば、お給料が101万円になったとします。基礎控除が33万円あるので、支払う住民税は約8000円。110万円でも約15,000円でしょう。

つまりお給料を稼いだ分で不利になることはなく、その分世帯の収入も増えるので「乗り越えやすい壁」と言われているんですね!

103万円の壁

103万円の壁は「所得税」に関わる壁のこと。この103万円の壁には2つのメリットがあるんです。

まず、妻自身が所得税を支払うボーダーラインであるということ。所得税の基礎控除は38万円です。したがって、38万円+給与所得控除額65万円=103万円以下のお給料の場合には「所得税は支払わなくてOK」ということになるんですね。

No.1800 パート収入はいくらまで税金がかからないか|所得税|国税庁

妻が所得税を支払わないというメリットに加えて、先ほど「税法上の扶養」でお話した配偶者控除を「夫が」受けられるというポイントがあります。

<配偶者控除>が適用される配偶者の条件の一つとして「年間の合計所得金額が38万円以下であること」というものがあります。つまりお給料をもらっている妻の場合、38万円+給与所得控除額65万円=103万円以下であれば配偶者控除として申請できることになるんですね。

No.1191 配偶者控除|所得税|国税庁

また、配偶者控除は38万円以下の所得で適用されますが、もし38万円以下を超えても76万円未満であれば控除を受けられる場合があります。これを<配偶者特別控除>と呼びます。こちらを受けるには所得以外にいくつかの条件に当てはまることが必要なので注意しましょう。

控除額は一定の金額ではなく、配偶者の所得金額によって控除額は下がっていきます。しかし少しでも控除があるということで、103万円の壁も「乗り越えやすい壁」と言えるのではないでしょうか。

No.1195 配偶者特別控除|所得税|国税庁

例えば、600万円の給与収入がある夫Aさんと、パートとして働いている妻Bさんの夫婦をみていきます。

Bさんのお給料が103万円と105万円の場合、Bさんが支払う所得税額は103万円では0円ですが105万円では1,000円となります。(ちなみに住民税額は103万円では約10,000円、105万円では約11,000円となります。)

Aさんの支払う所得税額は、103万円の場合「配偶者控除」を受けられるので約272,500円。105万円の場合「配偶者特別控除」を受けられるので約276,500円となるでしょう。

Aさんの世帯として考えると、703万円の収入で所得税は272,500円なので6,757,500円残り、705万円の収入では所得税は277,500円なので6,772,500円残ることになります。つまり、収入が増えた分、世帯収入は15,000円あがると言えるため、「壁を越えてもデメリットは少ない!」と言えるのではないでしょうか。(加えて住民税はどちらにもかかることを忘れないでくださいね!)

新 106万円の壁

2016年10月から新しい壁が登場します。それが<年収106万円以上で、従業員501人以上であるなどの条件に当てはまる働き方の場合には、パートやアルバイトでも厚生年金を適用する>という壁です。

これは、これまで夫の健康保険・国民年金の扶養として「第3号被保険者」となっていた妻が、年収106万円以上になると「第2号被保険者」となるというもの。これにより、働き方を考える主婦が多く出てくるとも言われています。

制度改正の概要と対応について

例えばこの改正が当てはまるX会社に勤めている、年収110万円のCさんとDさん。Cさんは自営業者の夫をもち、Dさんは会社員の夫がいます。

Cさんはこれまで夫と同じく「国民年金の第1号被保険者」として国民健康保険・国民年金を納めていました。しかし改正後はX会社の健康保険と厚生年金に加入する「国民年金の第2号被保険者」となります。

Dさんは夫の健康保険の扶養として「国民年金の第3号被保険者」だったため健康保険・国民年金保険料は納めていませんでした。しかし改正後は「国民年金の第2号被保険者」となるため、健康保険・厚生年金保険料を支払う必要がでてくるでしょう。

つまりこの改定により、自営業者の夫を持つ「国民年金の第1号被保険者」だった妻はメリットがあるとも言えるんです!Cさん夫婦がこれまで支払っていた国民健康保険料は2人で年間35万円、国民年金は年間40万円だったと仮定しましょう。

Cさんが「国民年金の第2号被保険者」となった場合、Cさんの夫1人が支払う健康保険料は年間30万に、国民年金は年間20万円となるでしょう。そしてCさんがお給料から引かれる健康保険料は年間約60,000円、厚生年金保険料は約108,000円となるとします。

するとCさん家の保険料額としては、これまで合計75万円支払っていたものが約67万円に下がることになるでしょう。また、Cさんはこれから厚生年金保険料も支払っていくので、将来厚生年金も受け取れることになるというメリットも生まれるでしょう!

130万円の壁

106万円の壁ができるまで、健康保険・厚生年金の加入条件は年収130万円以上とされていました。しかし106万円の壁ができたとしても、週20時間以下の労働時間・勤務期間が1年以下・従業員501人以下の会社という条件の働き方をしている妻の場合には、130万円の壁が残ると言えるんです。

130万円の壁を超えると、一般的に夫の扶養ではいられなくなり、妻は自分の働いている会社の社会保険を払う「国民年金の第2号被保険者」となるとされています。

例えば従業員300人の会社で働くEさんを見てみましょう。年収が128万円のEさんは、現在夫の健康保険の扶養として「国民年金の第3号被保険者」になっているため、健康保険・国民年金保険料は0円です。しかしシフトが増え、年収が140万円になったとします。

Eさんは「国民年金の第2号被保険者」となるため、健康保険・厚生年金保険料を支払うことになりますね。年収140万円の場合、健康保険料は約6,000円・厚生年金保険料は約10,000円です。年間192,000円を支払うため、残るのは1,208,000円となります。

手元に残る金額を考えるのであれば、年収130万円に抑えておいたほうが月々の余裕は生まれるでしょう。しかし厚生年金保険料を払っておくことで将来の年金額UPにもつながるため、さほどのデメリットがあるとは言えないでしょう。

平成27年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

141万円の壁

上で出てきた「配偶者特別控除」。これがなくなるのが141万円の壁。所得が76万円未満であれば、夫の所得から配偶者特別控除が最低3万円受けられました。しかし妻の所得が76万円+給与所得控除65万円=収入141万円の場合、夫の所得から控除は受けられなくなるというものです。

しかし妻の収入が140万円・145万円の場合、夫が収入600万円とすると、夫の所得税額は342,500円から348,500円となるということで6,000円のUP。収入が5万円増えることを考えるとこちらも「乗り越えやすい壁」と言えるのではないでしょうか。

注意したい壁は?

以上を見てみると、保険料が増えても将来厚生年金として返ってくるなら壁についてあまり考えなくてもいいかなと思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし注意してほしいことがあります。それが130万を超えたにもかかわらず妻が<厚生年金に加入できない職場に勤めている場合>です。

夫の健康保険の扶養条件として一般的に【60歳未満の場合は、年間130万円以下であること】とされていると思います。つまり妻が130万円を超えると、夫の健康保険の扶養ではいられなくなる=国民年金の第3号被保険者ではなくなると言えますね。

夫の健康保険の扶養でなくなった場合、自分の会社の健康保険・厚生年金に加入すればいい!と思いがちですが、自分の職場に社会保険がない場合には、「国民年金の第1号被保険者」として国民健康保険・国民年金を納める必要がでてきます。

1人で国民健康保険に加入すると、年収135万円の場合には国民健康保険料は年間約70,000円・国民年金は年間約200,000円。合計270,000円の支払い額UPとなるでしょう。しかし厚生年金は納めていないため、将来の年金額がUPするわけでもありません。

つまり、妻が130万円を超えて「国民年金の第1号被保険者」となる場合には、損になることがある!と言えるかもしれません。

家族手当は扶養内だけ?

会社によっては「家族手当・扶養手当・配偶者手当」などと呼ばれる手当てが、会社独自に決めている場合があります。この手当てがつく基準は会社によって「年収103万以下の家族に限る」や「健康保険の扶養となっている家族に限る」など様々。

もし夫の会社が<年収103万以下の家族1人には、月3万円の家族手当が支払われる>とすると、年に36万円の収入となりますよね。しかしもし妻が105万円を稼いだ場合、給料が2万円UPすることにより家族手当分36万円が入ってこないことになります。これだと、差額34万円が損とも言える状態になるでしょう。

それぞれの会社の手当てについても考慮して、働き方を考えることをおすすめしますよ!

おわりに

いかがでしたか?税金についてはややこしい計算が多く、頑張って働いたのに実は損になっていた!という家庭もあるのが事実。

それぞれが自分の家庭の状況を計算し、自分たちの家庭にあったライフプラン・働き方を考えられるようになることをおすすめします!

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